【生命科学】2次元ゲル電気泳動(2D-PAGE)【用語解説】

生命科学

タンパク質の研究や解析において、その分離・同定は重要なステップです。2次元ゲル電気泳動2D-PAGE)は、タンパク質分析のための優れたツールの一つであり、タンパク質の多くの特性を明らかにするのに役立ちます。この記事では、2D-PAGEの基本原理、手法、応用について詳しく説明します。

参考書籍

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  • バイオ実験イラストレイテッド〈1〉分子生物学実験の基礎 (細胞工学別冊 目で見る実験ノートシリーズ)
  • これからはじめる人のためのバイオ実験基本ガイド (KS生命科学専門書)
  • イラストでみる超基本バイオ実験ノート―ぜひ覚えておきたい分子生物学実験の準備と基本操作 (無敵のバイオテクニカルシリーズ)
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  • バイオ実験法&必須データポケットマニュアル―ラボですぐに使える基本操作といつでも役立つ重要データ
  • バイオ実験超基本Q&A―意外に知らない、いまさら聞けない

2D PAGEの参考書

  • 2D PAGE: Sample Preparation and Fractionation: Volume 1 (Methods in Molecular Biology)

2D-PAGEの原理

2D-PAGEは、タンパク質を分子量と等電点(pI)に基づいて分離するための手法です。以下にその主要な原理を説明します。

  1. 等電点 (pI): タンパク質は、pIと呼ばれるpH値で帯電が中性になる点があります。このpI値はタンパク質に固有で、異なるタンパク質は異なるpI値を持ちます。
  2. 第一次元電気泳動 (1D-PAGE): 最初に、タンパク質サンプルを1D-PAGEで分子量に基づいて分離します。このステップでは、タンパク質はゲル上で分子量に従って配置されます。
  3. 第二次元イソエレクトリック フォーカシング (IEF): 次に、ゲルストリップを取り出し、IEFによってpIに基づいて再分離されます。このステップにより、各タンパク質等電点に対応する位置に配置されます。

2D-PAGEの手法

2D-PAGEを実行するためには、以下のステップが必要です。

  1. サンプルの調製: タンパク質サンプルを抽出し、1D-PAGE用のサンプルバッファーに混ぜます。このステップではタンパク質を変性させ、電気泳動に適した状態にします。
  2. 第一次元電気泳動 (1D-PAGE): サンプルを1D-PAGEゲルにロードし、電気泳動を実行します。タンパク質は分子量に従ってゲル上に分布します。
  3. IEFゲルの調製: IEFゲルを調製し、第一次元で分離したタンパク質ストリップを載せます。IEFゲルではpH勾配が作成され、タンパク質はpIに従って移動します。
  4. 第二次元IEF: IEFを実行して、タンパク質をpIに基づいて分離します。このステップにより、タンパク質ストリップ上でタンパク質が帯電中性になる位置に移動します。
  5. ゲルの固定: 第二次元IEFが完了したら、IEFゲルを1D-PAGEゲルの上に固定します。
  6. 2D-PAGEの実行: 最終的に、2D-PAGEを実行し、タンパク質が分子量とpIに基づいて分離されます。
  7. ゲルの染色: 最後にタンパク質の位置を特定するため、染色をします。

2D-PAGEの応用

2D-PAGEはさまざまな生物学的研究に応用されています。

  1. タンパク質同定: 分離されたタンパク質バンドは、質量分析技術と組み合わせてタンパク質を同定するために使用されます。例えば、野生型と変異型由来のサンプルについてそれぞれ2D-PAGEをし、染色後比較をして変異型に特異的なタンパクを切り出して質量分析にかける等をします。
  2. タンパク質発現解析: 異なる条件下でのタンパク質の発現パターンを比較し、生物学的プロセスの理解に役立ちます。これも上記と同様に異なるサンプル毎に2D-PAGEをして比較をします。
  3. タンパク質修飾解析: タンパク質のリン酸化や糖鎖付加などの修飾を解析し、機能解明に寄与します。
  4. バイオマーカーの探索: 疾患診断や治療におけるバイオマーカーの同定に使用されます。

2次元ゲル電気泳動タンパク質の高解像度分析に欠かせない手法であり、生物学の多くの分野で研究者によって広く利用されています。その高感度と高分解能は、タンパク質関連の研究に新たな洞察を提供します。

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