【生命科学】質量分析(タンパク質同定)【用語解説】

生命科学

タンパク質は生物学的プロセスにおいて鍵となる分子であり、その正確な同定は生命科学研究において不可欠です。質量分析は、タンパク質の同定とその特性解析に用いられる強力な技術の一つです。この記事では、質量分析の原理、手法、および主要な応用について解説します。

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質量分析の原理

質量分析は、タンパク質やその他の生物分子の分析において、分子の質量や組成を測定するための技術です。その原理は、質量-電荷比(m/z)を測定することに基づいています。主要な質量分析の原理には以下の2つがあります。

  1. 時間飛行法(Time-of-Flight, TOF): この方法では、イオン化された分子を一定の電場に加え、質量-電荷比に応じてイオンが飛行する時間を測定します。質量が大きいほど時間が短く、小さいほど時間が長くなります。この情報を用いて、分子の質量を測定します。
  2. 質量分析計(Mass Spectrometer): 質量分析計は、イオン化された分子を質量分離し、それらの質量を測定するための装置です。分離は磁場や電場を用いて行われ、異なる質量のイオンは異なる経路を通ります。その後、質量分析器でイオンの質量を測定します。

質量分析の手法

質量分析はさまざまな手法で行われますが、主要な手法には以下のようなものがあります。

  1. 質量分析/質量分析(MS/MS): MS/MSは、タンパク質の同定と構造解析に広く使用される手法です。まず、質量分析器でタンパク質の質量を測定し、その後、特定のイオンを選択してさらに分析します。これにより、特定のアミノ酸配列や修飾を同定できます。
  2. 質量分析/質量分析/質量分析(MS/MS/MSまたはMS^3): MS/MS/MSは、より高度なタンパク質解析に使用されます。質量分析器で2回の質量分離と質量測定が行われ、複雑なタンパク質の構造情報を取得できます。
  3. 質量分析イメージング(Mass Spectrometry Imaging, MSI): MSIは、タンパク質代謝物質の空間分布を可視化するために使用されます。生体試料表面に質量分析を適用し、分子の分布を地図上に示すことができます。
  4. タンデム質量分析(Tandem Mass Spectrometry, MS/MS): タンデム質量分析は、特定のタンパク質またはペプチドを同定するための手法で、ペプチドのフラグメントイオンの質量を測定してタンパク質の同定を行います。

質量分析の応用

質量分析は多くの生物学的研究分野で幅広く応用されています。

  1. タンパク質同定: タンパク質の同定は質量分析の主要な応用の一つです。MS/MSやMS/MS/MSを用いて、タンパク質アミノ酸配列を決定し、データベースと照合して同定します。これはタンパク質質量分析(Proteomics)の基本です。
  2. タンパク質修飾の解析: タンパク質翻訳後修飾(リン酸化、グリコシル化、アセチル化など)を解析し、その機能や調節に関する情報を提供します。
  1. バイオマーカーの同定: 疾患の診断や治療効果のモニタリングに役立つバイオマーカーの同定に質量分析が使用されます。特定の代謝産物やタンパク質の変化を追跡し、疾患の診断や進行状況の評価に利用します。
  2. 薬物スクリーニング: 新薬のスクリーニングや薬物の代謝解析において、質量分析は薬物の特性評価に使用されます。薬物が生体内でどのように代謝されるかを解析し、効果や安全性の評価に寄与します。
  3. 糖鎖解析: グリコプロテオミクスの一環として、糖鎖の組成と構造を解析するために質量分析が利用されます。糖鎖の変化は疾患の診断に重要な情報を提供します。

まとめ

質量分析は、生物学的研究においてタンパク質やその他の生体分子の同定と解析に不可欠な技術です。その高感度と高分解能を活かし、タンパク質同定、修飾解析、バイオマーカーの同定、薬物スクリーニングなど多くの分野で応用されています。質量分析の進化により、生命科学の研究と医学の診断と治療においてさらなる進展が期待されています。

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