自分の全ゲノム決定してみた

やってみた

ついに自分の全ゲノム配列を決定しました。

決定までの段取りと結果を報告します。

なお、全ゲノムの元データはVCFファイルという形式で纏められているのですが、こちらが欲しい方は support[at]bioinforest.com までメールを下さいませ。

自己採血

私の自宅には下の写真のような実験室があります。

まずはマイクロピペットを用いて 25 μL の血液を 1.5mL チューブに採取します。

下の写真のように、専用の針で中指の腹に穴を開けます。

穴を開けた後は、穴に対して押し出すように中指の根本から力をかければ、下の写真のように血が出てきます。

後は血が凝固しないうちに、マイクロピペットで吸い上げて 1.5mL チューブに採取して完了です。

ゲノム抽出

血液からのゲノム抽出には「NucleoSpin Blood」(下写真) というキットを用いました。

中は以下のようになっています。

写真上部にある5つのチューブはスピンカラムです。

その他、細胞を溶かすための溶液やゲノム以外を除去するため等の溶液(B5,B3,BW, Elution Buffer)やタンパクを分解するプロテイナーゼK(右上褐色びん)が入っています。

これらを用いてゲノムを血液から抽出します。

実験手順は付属の説明書に従うだけです。難しくありません。1時間もかからずに終わります。

ちなみに、全部で10回分の「血液→ゲノム」の抽出実験が行えて、値段は税抜きで ¥5,300 です。

1回あたり、530円くらいになります。

抽出後は、NanoDrop という主に核酸(DNA,RNAなどのこと)の濃度を測定する機器で、DNA の濃度を測定します。

NanoDrop は横軸にある波長の範囲での光をサンプルに照射して、その吸光度を調べることで DNA/RNA の濃度を推定します。

DNA塩基の部分に芳香環があり、平均して 260nm の波長の光を吸収します。

吸光度から DNA の濃度を推定する換算の式は既に明らかになっていて、そこからサンプルの濃度を求めることができます。

今回の測定結果では、DNA が40.2 ng/uL という結果になりました。

ゲノム配列を決定

今回は 株式会社 レリクサ 様にゲノムの決定を行って頂きました。

抽出したゲノム溶液を送付すれば、ゲノム配列が記録されたHDDを送り返してくれます。

値段は、キャンペーン期間でしたので、約 ¥90,000 でした。普段は ¥100,000 〜 の値段です。

また、今回はバイオインフォマティクスの解析も依頼したので、総額 ¥150,000 でした。

これに税金が入ったので、結局 ¥165,000 かかりました。

なお、結果が得られるまでの期間は約3ヶ月でした。

解析結果の要約

全配列が明らかにされている、ヒトゲノム(GRCh38)に対して、どの部分に変異があったかを纏めたファイル(vcfファイル)が結果のファイルになります。

vcf ファイルの中身は以下のようになっています(分かりやすさのために幾つかの列を省略しています)。

PosdbSNPRefAltGENE
49298rs200943160TCFAM138A-OR4F5
51803rs62637812TCFAM138A-OR4F5
52238rs150021059TGFAM138A-OR4F5
55164rs3091274CAFAM138A-OR4F5
55926rs199663995TCFAM138A-OR4F5
57952rs189727433ACFAM138A-OR4F5
61350rs200672483TATFAM138A-OR4F5
61442rs74970982AGFAM138A-OR4F5
63735rs201888535CCTACFAM138A-OR4F5
67179rs149952626CGOR4F5
69511rs75062661AGOR4F5
74681rs13328683GTOR4F5

上記は染色体1に関して見つかったゲノム変異の一部を抜粋したものです。

例えば、私には 1番染色体の 67179 番目の C (シトシン) が G (グアニン) に変わっている変異があるようです。

第2列目の rs から始まる番号は、変異に対して割り振られている ID です。

研究や論文で変異について記述する際に用いる番号です。

逆にいうと、rs 番号がある変異は、何かしらの研究で調べられている、見つかっているものと言えます。

変異がどのような効果を持つかについては、この rs 番号を調べれば良いわけです。

解析結果の要約 その2

ゲノム解析の結果、私には 3,871,711個もの変異があることが明らかになりました。

このうち、ホモ変異(両親から受け継いだ2つのゲノムにおいて、そのどちらにおいても変異が認められるパターンの変異)は、1,523,717 個ありました。

ヘテロ変異(両親から受け継いだ2つのゲノムにおいて、そのいずれかだけに変異が認められるパターンの変異)は、2,347,994 個ありました。

なお、rs 番号が割り当てられた変異は 3,437,500 個ありました。

今後について

いろいろな病気について、どのような変異があるとその病気になる、または、なりやすい、のか調べるつもりです。

そして、自分にその変異があるか纏めていこうと思っています。

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