生物学や分子生物学の研究において、DNAの特定と解析は不可欠です。その中でも、サザンブロッティング(Southern blotting)はDNAの分析において非常に重要なツールの一つです。この記事では、サザンブロッティングの原理、手法、応用について詳しく解説します。
参考書籍
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サザンブロッティングの参考書
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サザンブロッティングの原理
サザンブロッティングは、DNA断片の特定と定量を可能にする技術で、主に以下の3つのステップから成り立っています。
1. DNA分離: まず、DNAサンプルを特定の酵素(通常は制限酵素)で切断し、DNA断片を得ます。これらのDNA断片は、ゲル電気泳動によって分離され、サイズに応じてゲル上で配置されます。
2. 転送(ブロッティング): 電気泳動を終えたら、DNAをゲルから膜(通常はニトロセルロースまたはナイロン膜)に転送します。これにより、DNAの配置が膜上に複製されます。
3. DNA検出: 転送されたDNA断片を、特定のDNAプローブと呼ばれる標識されたDNAまたはRNA断片を使用して検出します。DNAプローブは、目的のDNAシーケンスに相補的であるため特異的に結合し、その位置を特定できます。検出は通常、放射性同位体や非放射性ラベル付け技術を使用して行われます。
サザンブロッティングの手法
サザンブロッティング手法には以下のステップが含まれます。
1. DNAサンプルの調製: DNAを抽出し、適切な酵素で消化して特定のDNA断片を得ます。DNAサンプルは通常、酵素処理後にエタノール沈澱法を用いて精製されます。
2. ゲル電気泳動: DNAサンプルをゲルにロードし、電気泳動を実行します。DNA断片は、サイズに応じてゲル上で分離されます。
3. 転送(ブロッティング): ゲル上のDNA断片は、転送バッファーを使用して膜に転送されます。転送バッファーは、DNAの電気泳動中の移動を助けるための条件を提供します。
4. ハイブリダイゼーション: 転送されたDNAが膜上にある間に、DNAプローブを含むハイブリダイゼーション液に浸します。プローブはDNA断片と特異的に結合し、目的のDNA断片を検出します。
5. ウォッシュ: ハイブリダイゼーション後、膜はウォッシュ(洗浄)ステップを経て非特異的な結合物質を除去します。これにより、特異的な結合が増強されます。
6. 検出: 最終的に、検出ステップに移り、DNAプローブが結合した場所が視覚化されます。放射性同位体や非放射性ラベルを使用して、プローブとDNA断片の結合を検出します。
サザンブロッティングの応用
サザンブロッティングはさまざまな生物学的研究に応用されています。
- ジェノムマッピング: 特定のDNA領域の位置を特定するために使用され、遺伝子座のマッピングに貢献します。例えば、ある遺伝子に薬剤耐性遺伝子等を挿入することで該当遺伝子を破壊した細胞株を作製した場合、破壊株のゲノムを抽出し、該当遺伝子内に薬剤耐性遺伝子の配列があるか調べることをします。
- 遺伝子発現解析: 特定の遺伝子の発現レベルを調べ、細胞内での遺伝子発現の変化を追跡します。
- 疾患診断: 疾患に関連する遺伝子変異を特定し、診断や遺伝的カウンセリングに応用されます。
- 進化研究: 種間のDNAシーケンスの比較に使用され、進化解析に貢献します。
- DNAフィンガープリント: DNAの固有のパターンを特定し、個体識別や犯罪捜査に利用されます。
サザンブロッティングは、DNAの特定と解析において非常に強力なツールであり、分子生物学研究において広く利用されています。特定のDNA断片を検出し、その存在を確認することで、多くの生命科学の問題に答える手助けをしています。
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