【生命科学】リポフェクション法【用語解説】

生命科学

リポフェクション法とは、遺伝子の導入手法の一つで、リポソームを使用し、細胞DNAを送り込む方法を指します。

原理

リポフェクション法の原理は、DNA分子とリポソームが複合体を形成することによりDNA細胞膜を透過しやすくなる、というものです。

リポソームは双性界面活性剤で、疎水性領域と親水性領域を持っています。

DNAの負の電荷とリポソームの正の電荷が引き合うことでリポソーム-DNA複合体が形成され、この複合体が細胞膜を透過して細胞質へと入ります。

実験手順

リポフェクション法の基本的な手続きは次の通りです。

  • 1. DNAとリポソームを混合し、リポソーム-DNA複合体を作成します。
  • 2. 複合体を作成するために、適切なバッファに溶解します。
  • 3. 複合体を細胞に添加します。このときの細胞のコンディションが非常に重要です。細胞が高密度であると効率が落ち、低密度であると細胞が破壊される可能性があります。
  • 4. 一定時間後に複合体を含んだバッファを含んでいないバッファと交換します。
  • 5. 複合体の導入成功を確認するために、遺伝子の発現などを評価します。

応用

リポフェクション法は分子生物学の様々な分野で使用されます。特に、遺伝子の発現を調整したり、特定の遺伝子ノックアウトしたりするために使われます。

また、細胞に特定のタンパクを発現させるための手法としても使用されます。

リポフェクション法は、まずは細胞質DNAを送り込んだ後、細胞内の遺伝子として組み込まれて機能することが期待されます。

問題点と課題

リポフェクション法は多くの利点を持つ一方で、いくつか重要な問題点も抱えています。

最も顕著な問題点はトランスフェクションの効率の低さで、すべての細胞DNAを取り込むわけではありません。また、取り込まれたDNAが正常に機能するかどうかも保証されていません。それゆえに、この手法は大量の細胞を処理するのには適していません。

対策としては、トランスフェクションの効率を上げることや複合体の最適化などが考えられます。

歴史と経緯

リポフェクション法は、1974年に最初に開発され、それ以来、遺伝子工学の研究開発に広く用いられるようになりました。

最初は遺伝子の導入効率が低く問題視されていましたが、リポソームの改良や適切な細胞処理法の開発などにより、その効率は大幅に向上しています。

関連手法

リポフェクション法は、エレクトロポレーションやマイクロインジェクションなど他の遺伝子導入手法と比較されます。

これらの手法は各々利点と欠点を持っていますが、リポフェクション法は生体細胞でも容易に遺伝子導入が可能であるという利点があります。

また、ウイルスベクターを使用する手法と比較して、感染リスクが低いという利点もあります。

参考書籍

バイオ実験基本セット

バイオ実験イラストレイテッド

生命科学基礎セット

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