ストレプトマイシンは、抗生物質の一種であり、特に結核菌に対して効果を発揮します。化学式は$\text{C}_{21}\text{H}_{39}\text{N}_{7}\text{O}_{12}$であり、その構造は1つのグルコース環、1つのストレプトルジン環、そして1つのグアニジニウムカチオンから構成されています。これにより、ストレプトマイシンは水溶性であり、体内で広範に分布できます。
作用機序
ストレプトマイシンの作用原理は、細菌のタンパク質合成を阻害するところにあります。
具体的には、30Sリボソームサブユニットに結合し、mRNAの読み取りに異常を引き起こします。これにより、グラム陰性菌や結核菌などに対して抗菌活性を持つことができます。
また、ストレプトマイシンは細菌の細胞壁に容易に透過することができ、広範囲に効果を発揮します。
歴史と経緯
ストレプトマイシンは、1943年、アメリカのセルマン・ワクスマンによって発見された世界初の抗生物質で、結核治療のために開発されました。
ワクスマンは、ニュージャージー州の土壌から得られた微生物、ストレプトマイセス・グリセウスからこの成分を抽出しました。
その後、ストレプトマイシンは1945年に米国で結核の治療薬として承認され、その後も広く使用され続けました。
問題点と対応策
ストレプトマイシンの使用には、耐性菌の発生や副作用などの問題があります。特に耐性現象は大きな問題で、結核菌がストレプトマイシンに耐性を持つことが確認されています。これを対策するためには、用量や使用法の調整、また他の抗生物質との併用などが必要です。
一方、副作用としては、聴覚障害や平衡障害が報告されています。ストレプトマイシンは内耳に影響を与え、特に長期間または高用量で使用するとこのような副作用が現れやすくなります。
以上のように、ストレプトマイシンは抗生物質として大きな効果をもたらす一方で、その使用には注意が必要です。
応用
ストレプトマイシンは主に結核の治療に用いられますが、それ以外の感染症、例えばペストやブルセラ症などにも使用されることがあります。
また、研究室では、細胞培養において汚染を防ぐためにも使用されます。
参考書籍
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- これからはじめる人のためのバイオ実験基本ガイド (KS生命科学専門書)
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- バイオ実験法&必須データポケットマニュアル―ラボですぐに使える基本操作といつでも役立つ重要データ
- バイオ実験超基本Q&A―意外に知らない、いまさら聞けない
バイオ実験イラストレイテッド
- バイオ実験イラストレイテッド〈1〉分子生物学実験の基礎 (細胞工学別冊 目で見る実験ノートシリーズ)
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