【生命科学】リシークエンシング【用語解説】

生命科学

リシークエンシング(Resequencing)は、既知の配列(リファレンス配列)を基にして、対象となるゲノムの配列を決定する方法を指します。具体的には、リファレンス配列としてヒトゲノム等の既存の配列情報を利用し、その配列とターゲットとなるゲノムの類似性や差異を明らかにすることでゲノム配列を決定します。

手順と解析

リシークエンシングの基本的な実験手順は以下のような流れとなります。

  • 1. 対象となるゲノムDNAを抽出します。
  • 2. 抽出したDNAを適当な大きさの断片に切り分け、その両端をシーケンシングします。
  • 3. シーケンシングの結果得られるリード(配列読み出し情報)を、リファレンス配列と突き合わせます。
  • 4. リファレンスにマッチしたリードやその位置を基に、ゲノムの配列情報を得ます。

解析の流れは次のようになります。

  • 1. リードのアライメント(配列の一致を取る操作)を行います。具体的には、リファレンスゲノムに対してリードをマッチングさせることで、リードゲノムのどの位置から得られたものかを推定します。この際、差異も同時に抽出できます。
  • 2. 抽出した差異を基に、変異(ミューテーション)のアノテーションを行います。これには遺伝子領域、エキソン領域、翻訳開始/終了コドンなどのゲノム情報が利用され、その結果、対象ゲノムの特性や機能を理解することが可能となります。

特徴と具体例

リシークエンシングは、特定の生物のゲノム配列の決定や個体間の遺伝的差異の解析などに有用です。

例えば、ヒト遺伝子診療の一環として、遺伝性疾患の原因となる遺伝子変異の探索に利用されます。

また、微生物の感染症診断や耐性菌の発生動向の解析、ゲノム疫学の研究、進化学的な問いへの解答などにも広く利用されています。

関連する概念や用語との比較

ゲノムシーケンシングに関連する概念や用語には、de novo シーケンシングなどがあります。

de novo シーケンシングは、対象ゲノムの配列情報が一切ない状況で、ゼロから配列を決定する手法を指します。リシークエンシングが既知のリファレンス配列を基に配列を決定するのに対し、de novo シーケンシングではゲノムの全体像を掴むのが目的となります。

問題点と対策

リシークエンシングには、いくつかの問題点が存在します。例えば、高品質なリファレンス配列がない場合、解析結果の精度は大きく低下します。

その他にも、リファレンス配列とのマッチング時には配列の違いが少ないほど信頼性が高いとされるため、別種であったり遺伝的に大きく異なるゲノムを対象とする場合には、その限界が露呈します。

これらの問題点への対策としては、マルチリファレンスアプローチを用いる方法があります。マルチリファレンスアプローチでは、複数の異なるリファレンスゲノムを用いてマッチングを行い、それぞれの結果を統合するという方法をとります。

応用

リシークエンシングの応用として、遺伝子診療や感染症疫学、野生生物の保全など、遺伝情報が必要とされる様々な生物学的な問いに対する解答に用いられています。

また、近年は、人々それぞれの遺伝情報をもとに、個別化された医療(パーソナライズドメディシン)を行うための基礎研究にも用いられています。

参考書籍

バイオ実験基本セット

バイオ実験イラストレイテッド

生命科学基礎セット

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