TAクローニングとは、5’末端にアデニンが突出したDNA断片と、3’末端にチミンが突出した切断済みのベクターを利用することで、制限酵素処理等をせずに、DNA断片とベクターを繋ぎ合わせて、そのまま形質転換等に用いる遺伝子クローニング技術です。
原理
TAクローニングの原理は、Taqポリメラーゼの性質を利用しています。
Taqポリメラーゼによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅されたDNA断片の5’末端にはアデニン(A)が追加されます。
その結果、切断済みのベクターの3’末端にチミン(T)が突出している場合、TとAが付着末端として働き、DNA断片と相互に結合します。
実験手順や解析手順
- 1. PCR増幅を行い、増幅物に必要な場合はポストPCR処理(末端A追加反応)を行う。Taqポリメラーゼを用いると、自動的に5’末端にアデニンが追加されます。
- 2. 処理したPCR産物と、3’末端にチミンを持つベクターを混合した上で、DNAリガーゼを用いて直接結合させる。
- 3. 組み換え体を宿主細胞に導入し、プラスミドとして増殖させる。
- 4. 適切な抗生物質を含む培地で細胞を育て、成育させることでコロニーを作る。
- 5. コロニーPCRや制限酵素消化などのスクリーニングを行い、適切に組み換えが行われたクローンを選択する。
Gibson Assemblyとの比較
Gibson Assemblyとは、Gibsonらが開発した遺伝子組換え技術です。TAクローニングとは異なり、付着末端の形成や、DNAリガーゼを使用することなく、複数のDNA断片を直接連結します。
短いオリゴヌクレオチド配列、蛍光タンパク質の遺伝子など、特定の配列を持つ多数のDNAフラグメントを一度にクローニングすることが可能で、そのため、TAクローニングよりも大きな柔軟性と効率性を持つことが特徴的です。
参考書籍
バイオ実験基本セット
- これからはじめる人のためのバイオ実験基本ガイド (KS生命科学専門書)
- イラストでみる超基本バイオ実験ノート―ぜひ覚えておきたい分子生物学実験の準備と基本操作 (無敵のバイオテクニカルシリーズ)
- 改訂 バイオ試薬調製ポケットマニュアル〜欲しい試薬がすぐにつくれる基本操作と注意・ポイント
- バイオ実験法&必須データポケットマニュアル―ラボですぐに使える基本操作といつでも役立つ重要データ
- バイオ実験超基本Q&A―意外に知らない、いまさら聞けない
バイオ実験イラストレイテッド
- バイオ実験イラストレイテッド〈1〉分子生物学実験の基礎 (細胞工学別冊 目で見る実験ノートシリーズ)
- バイオ実験イラストレイテッド②
- バイオ実験イラストレイテッド〈3+〉本当にふえるPCR (目で見る実験ノートシリーズ)
- バイオ実験イラストレイテッド④
- バイオ実験イラストレイテッド〈5〉タンパクなんてこわくない (目で見る実験ノートシリーズ)
- バイオ実験イラストレイテッド⑥
- バイオ実験イラストレイテッド⑦
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