制限酵素(Restriction Enzyme)は、主に細菌内で産生される酵素の一つで、特定の塩基配列を認識し、その部分でDNAを切断する特性を持っています。制限酵素は、細菌が自身をウイルスの侵入から守るための防御機構として進化しましたが、DNAを切断するという性質から遺伝子クローニングに利用されています。
制限酵素の分類とその特徴
制限酵素は、I型、II型、III型の3つの型に分類されます。
I型制限酵素
I型制限酵素は、認識部位と切断部位が異なるという特徴があります。認識部位から1000塩基対以上離れた部位を切断します。
II型制限酵素
II型制限酵素は、I型とは異なり、認識部位と切断部位が一致するという特徴を持っています。
この特性により、II型制限酵素は遺伝子組み換えの実験や遺伝子クローニングに頻繁に用いられます。
代表的なII型制限酵素に、EcoRIがあります。EcoRIは、認識部位であるGAATTCを切断し、5’末端には突出した一本鎖(付着末端)を作り出します。
III型制限酵素
III型制限酵素は、認識部位と切断部位が離れている点でI型に似ていますが、認識部位から25-27塩基対離れた部位を切断します。
制限酵素の実験手順、解析手順、手続き
制限酵素を用いた実験の一般的な手順は以下の通りです。
- 1. 制限酵素に適したバッファと制限酵素の混合液を作製する。
- 2. 適量のDNA断片を加える。
- 3. 37℃で一定時間(多くの制限酵素は1時間)インキュベーションさせ、反応を進行させる。
- 4. 断片化されたDNAのサイズを解析するためにアガロースゲル電気泳動を実施する。
制限酵素の応用
制限酵素の応用例としては、遺伝子クローニングやDNAフィンガープリント、遺伝子マッピングなどがあります。
また、生物学的研究で使用されるゲノム編集技術の一部、特にCRISPR/Cas9システムのCas9は制限酵素の1種です。
参考書籍
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- 改訂 バイオ試薬調製ポケットマニュアル〜欲しい試薬がすぐにつくれる基本操作と注意・ポイント
- バイオ実験法&必須データポケットマニュアル―ラボですぐに使える基本操作といつでも役立つ重要データ
- バイオ実験超基本Q&A―意外に知らない、いまさら聞けない
バイオ実験イラストレイテッド
- バイオ実験イラストレイテッド〈1〉分子生物学実験の基礎 (細胞工学別冊 目で見る実験ノートシリーズ)
- バイオ実験イラストレイテッド②
- バイオ実験イラストレイテッド〈3+〉本当にふえるPCR (目で見る実験ノートシリーズ)
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