【生命科学】コスミドベクター【用語解説】

生命科学

コスミドベクターは、プラスミドベクタークローニング可能なDNA断片の長さのおよそ10倍程度の長さのDNA断片をクローニングできるベクターの一種です。

名称の由来

コスミドベクターの構成がプラスミドとλファージウイルスの一種)のコス因子を組み合わせたものであるため、「コス」「ミド」ベクターと名付けられました。

構造と機序

コスミドベクターは、プラスミドベクターの骨格となる部分と、λファージのコス因子(cos: cohesive ends)からなる部分を主体として構成されています。

プラスミドベクター部分にはマルチクローニングサイト(MCS)等の制限酵素の認識部位や複製元(Ori)が存在し、λファージのコス部分はバクテリオファージが認識をしてDNAをパッケージングして形質導入をするための因子が含まれます。

プラスミドベクターMCSクローニングしたいDNA断片を挿入し、形質導入により宿主細胞DNA断片を組み込みます。

特徴

コスミドベクタープラスミドファージを組み合わせたベクターとして、以下の特性があります。

実験手順

コスミドベクターによる遺伝子クローニング手続きは以下の通りです。

具体的な数値

コスミドベクターは一度に挿入できるDNA断片の長さが37-52 kbとされています。これはプラスミドベクターの4-5 kbと比べて非常に長いです。

従って、例えば50 kbの遺伝子クローニングしたい場合、プラスミドベクターでは約10個以上のフラグメントに分けてクローニングする必要があるのに対し、コスミドベクターなら一度にクローニングすることが可能となります。

応用

コスミドベクターは大きな遺伝子断片を挿入できるため、ゲノム解析などに利用されます。また、遺伝子治療などの医療分野でも利用されることが期待されています。

遺伝子解析の場合、まず必要な遺伝子コスミドベクター挿入し、その後、大腸菌などの宿主細菌を用いて遺伝子を増幅させます。その後、その遺伝子を抽出し、シーケンス解析などを行うことで、その遺伝子の機能を解析します。

遺伝子治療の場合、病気治療のための遺伝子コスミドベクター挿入し、それを対象の細胞に導入します。その遺伝子細胞で発現することで、病気の治療に繋がることが期待されています。

問題点と対応策

コスミドベクターを使うには、高度な技術が必要となるという点が挙げられます。デリバリーシステムとしてのλファージの活用は比較的高度な技術を必要とします。この問題に対する対応策としては専門的な教育や経験を積むことが求められます。

また、λファージを利用したシステムは生物に対する安全性が十分に明らかにされていないという問題点があります。この問題に対する対応策としては、十分な安全評価を行うことや、代替のデリバリーシステムを開発するといったことが考えられます。

参考書籍

バイオ実験基本セット

バイオ実験イラストレイテッド

生命科学基礎セット

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