TALEN(Transcription Activator-Like Effector Nucleases)は、対象とするオリゴヌクレオチド配列に特異的に結合し、その位置でDNAを切断することで遺伝子の機能を変化させるゲノム編集技術の一つです。
原理
TALENは、植物病原性の黄色桿菌のタンパク質であるTALエフェクターと、制限酵素のFokIを利用します。
制限酵素はDNAを切断する能力を持っていますが、このFokIはペア状にならないと活性化しません。つまり1つのFokIは切断する場所を決定するためのもう1つのFokIを必要とします。TALエフェクターは任意のオリゴヌクレオチド配列に特異的に結合する能力がありますので、これを利用して2つのFokIを目的の場所に導き、ゲノム上の特定の位置を切断することができます。
手順
TALENによるゲノム編集は次の手順で行われます。まず、目的とする遺伝子に結合するように改変されたTALエフェクターとFokI核酸酵素を作製します。そして、このTALENを目的の細胞に導入します。次に、TALENが結合した部分でDNAが切断され、細胞がこの切断部を修復する過程で遺伝子が編集されます。
歴史や経緯
TALENは、2009年に報告され、その後すぐにゲノム編集のためのツールとして利用が始まりました。特に、ZFNに伴う問題点を改良した点から注目を集め、それまでZFNでしか取り組めなかった遺伝子改変に新たな可能性をもたらしました。
他のゲノム編集技術との比較
TALENはZFNs(Zinc Finger Nucleases)およびCRISPR/Cas9と同じく、ゲノム編集ツールの一つですが、それぞれには大きな違いがあります。
ZFNsは特異性が低く、設計が難役だと言われています。一方、CRISPR/Cas9は効率が良く設計が容易で、ゲノム編集技術の中でも人気のツールですが、オフターゲットと呼ばれる意図しない場所への影響を及ぼす可能性が懸念されています。一方で、TALENは比較的設計が簡単で特異性が高いのが特徴で、オフターゲットが少ないとされています。
問題点や課題とその対応策
TALENの主な問題点は、配列に特異的な結合部位を作ることによる難しさと、クローンの作製の難しさです。また、TALEN構築時のコストも問題点の一つとされています。これらの問題に対しては、結合部位のデザインを工夫したり、より効率的なクローニング法を開発することで改良が進められています。
参考書籍
バイオ実験基本セット
- これからはじめる人のためのバイオ実験基本ガイド (KS生命科学専門書)
- イラストでみる超基本バイオ実験ノート―ぜひ覚えておきたい分子生物学実験の準備と基本操作 (無敵のバイオテクニカルシリーズ)
- 改訂 バイオ試薬調製ポケットマニュアル〜欲しい試薬がすぐにつくれる基本操作と注意・ポイント
- バイオ実験法&必須データポケットマニュアル―ラボですぐに使える基本操作といつでも役立つ重要データ
- バイオ実験超基本Q&A―意外に知らない、いまさら聞けない
バイオ実験イラストレイテッド
- バイオ実験イラストレイテッド〈1〉分子生物学実験の基礎 (細胞工学別冊 目で見る実験ノートシリーズ)
- バイオ実験イラストレイテッド②
- バイオ実験イラストレイテッド〈3+〉本当にふえるPCR (目で見る実験ノートシリーズ)
- バイオ実験イラストレイテッド④
- バイオ実験イラストレイテッド〈5〉タンパクなんてこわくない (目で見る実験ノートシリーズ)
- バイオ実験イラストレイテッド⑥
- バイオ実験イラストレイテッド⑦
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