【生命科学】ヒストン【用語解説】

生命科学

ヒストンとは、真核生物クロマチン内に存在するタンパク質の一種で、その主な役割はDNAの保護と構造の維持です。DNAは非常に長い分子であり、細胞内で適切に機能するためには、適切な形状にまとめられ、管理される必要があります。それを可能にするのがヒストンの役割です。

ヒストンとは

ヒストンには、ヒストンH1、H2A、H2B、H3、H4の5種類があり、H2A、H2B、H3、H4の4種類はコアヒストンと呼ばれ、2つずつでヒストンオクタマーを形成します。そして、約146塩基対のDNAがこのヒストンオクタマーに巻きつくことでヌクレオソームという基本単位が形成されます。

ヒストンの特徴

ヒストンはその特性上、高度に保存されたタンパク質です。それは、ヒストンの役割が全ての生物種(少なくとも全ての真核生物)で一般的であり、進化の間に多くの変化を経験する余地があまりないためです。

また、ヒストンN末端の「テール」領域と呼ばれる部分があり、これがエピジェネティックな調節の場となります。

ヒストンテール修飾

ヒストンテールの化学的な修飾は一部の遺伝情報がどのように使われるかを制御する重要な手段となります。

ヒストンテールは、アセチル化メチル化ユビキチン化など、様々な種類の化学的修飾を受けることができます。

これらの修飾は、ヒストンDNAに対する相互作用を変えることにより、特定の遺伝情報の利用可能性を変えます。

例えば、ヒストンテールアセチル化されると、ヒストンDNA の間の相互作用が緩められ、遺伝子がよりアクティブになります。

ヒストンのメチル化

ヒストン修飾の中でもメチル化は特に重要です。ヒストンメチル化とは、ヒストンリジンあるいはアルギニンといったアミノ酸窒素原子にメチル基を付加する反応です。リジンであれば最大3つ(トリメチル化)、アルギニンであれば最大2つ(ジメチル化)のメチル基が付加されます。

また、ヒストンメチル化の中でも遺伝子の発現調節に特に重要なのは、リジン4のトリメチル化H3K4me3)とリジン27のトリメチル化H3K27me3)です。

H3K4me3

ヒストンH3のリジン4トリメチル(H3K4me3)とは、ヒストンH3の4番目のアミノ酸リジンが3つのメチル基を付加した状態を指す言葉です。H3K4me3遺伝子プロモーター領域に特に富むことから、遺伝子発現の活性化に関わることが多いとされています。

H3K27me3

ヒストンH3のリジン27トリメチル(H3K27me3)は、遺伝子発現の抑制と関連が深いとされています。H3K27me3は複数の連続したヌクレオソームに渡り広範囲にわたって存在することが多く、これにより該当領域の染色体構造が緊密に保たれ、遺伝子発現が抑制されると考えられています。

まとめ

ヒストンとその修飾は、DNAの構造と機能、遺伝子の発現調節という根本的な生命現象を理解するためのカギとなります。また、その知識は医療や生物学の進歩に寄与する可能性があります。ヒストンの研究はまだまだ発展途上で、これからもその重要性は増していくことでしょう。

参考書籍

バイオ実験基本セット

バイオ実験イラストレイテッド

生命科学基礎セット

生命科学用語解説
スポンサーリンク
猫森ひなたをフォローする
バイオインフォの森

コメント